臨終を迎えたら(7)葬儀社への依頼方法
自分のイメージを持って
「何もわからないので、よろしくお願いします」
「いくらぐらいかかりますか?」
葬儀の打合せに当たって、こう切り出したくなるのは人情ですが、これでは業者任せになってしまいます。請求書を見たときに、「こんなつもりではなかった」と悔やんでみても後の祭りです。
とかく業者任せになりがちですが、まず自分の予算を担当者に伝えます。その予算内で、自分のイメージする葬儀が行えるかどうかを確かめます。写真があれば見せてもらうのもいいでしょう。
葬儀にかかる費用は、地域の習慣や葬儀の規模によって大きく違い、目安となるものがありません。そのために、業者との間で葬儀料金を巡るトラブルが起こりやすくなります。
葬儀料金は、葬儀に必要なサービスがパックされている基本料金の部分と、希望に応じて用意されているオプション料金とに分かれているのが普通です。
支払いの請求は、葬儀後2~3日の内になされます。遺族が葬儀の慌ただしさから解放された頃で、頭が回らなかった費用のことも考えられるようになります。ここで、見積もりと大きく違っていたり、オプションが高額だったりすることがあります。また、打ち合わせでは業者しか使わない専門用語で説明されることが多くありますので、知らない用語については、それがいったい何を意味しているものかしっかりと説明を求めます。
葬儀の費用は弔問・会葬者数によって大きく異なる項目があります。
料理代金や返礼品などは、数量によって金額が大きく変わってきます。返品をすることができるものもあります。また追加が予定される品目についても聞いておきます。
トラブルを避ける法
見積書の提出は常識ですが、「見積書に記載のないものは、請求をされても払わない」ことの確認について念押しをします。
悲しみのあまり、何でも「はい、はい」と返事をすることはやめましょう。
そのためにも、信頼できる親戚などには同席をしてもらいます。当事者にとっては判断のつかないことも多くあります。冷静に担当者の言うことを聞ける人がそばにいることは大事なことです。
葬儀社への連絡
葬儀社には次のことを伝えます。
- 故人の氏名、住所、電話、年齢、死因
- 故人が現在いる病院名などその住所、電話
- 搬送の必要性の有無
- 自分の氏名、住所、電話、故人との関係
- 葬儀の形式(宗教・宗派・菩提寺など)
臨終を迎えたら(6)葬儀の費用
葬儀のさまざまな費用
葬儀の3大費用は以下の3つがあります。
- お寺への謝礼:読経料、戒名料、御車代、御膳料など
- 葬儀料金:基本料金、オプション(別途の費用)
- 飲食接待費:通夜ぶるまい、精進落とし、会葬礼状、粗供養品など
上記以外にも考慮しておかなくてはならないものに、香典返し、斎場使用料、関係者への心付け、火葬料金などがあります。斎場を借りる場合は、収容人数、利用可能時間帯、宿泊施設の有無、通夜ぶるまい・精進落としをするスペース、駐車場スペース、使用料金など、施設・サービスの面をよく検討しましょう。
関係者への心付けは、遺体搬送の運転手、仕出弁当店、火葬場の係員、葬儀業者、その他手伝いの人など。
火葬料金についても、事前に地域の料金を確かめておきます。
葬儀社選びの方法
葬儀社は、葬儀の全般をすべて請け負います。それだけに、しっかりとした葬儀社選びをすることが大切になります。
葬儀社を知らない場合は、市区町村の役所や病院に聞くと教えてもらえます。また、古くから住んでいる人も多くの経験から信頼できる葬儀社を知っている場合があります。
葬儀社選びの一つの目安としては、各都道府県の葬儀協同組合に加盟している会社から選ぶ方法もあります。
自治体が公共サービスの一環として行っている市民葬儀などの制度や、各地にある「冠婚葬祭互助会」のシステムなどを利用してもよいでしょう。
あらかじめ決めておくこと
葬儀社に依頼する前に、葬儀に対する希望や予算などをはっきりさせておきましょう。遺族や親族、世話役などとともに、通夜や葬儀の日程、葬儀にかける費用などについて話し合うことが大切です。
葬儀の形式や規模については、故人の生前の考え方、故人の社会的地位や交際範囲などを考慮しなくてはなりません。
臨終を迎えたら(5)葬儀の準備
葬儀の準備の前に
家族や近親者に連絡を済ませた後は、葬儀の準備にかかります。実際的な準備は葬儀社と打ち合わせしながら行われますが、それ以前に遺族側として決めておかなければならないことがあります。それは葬儀をどの宗教・宗派で行うのか、あるいは無宗教で行うのかということです。
宗教・宗派によって葬儀を行うのであれば、菩提寺などへ連絡をします。日程などは後で決めることとなりますので、ここではだいたいの了解をとっておきます。菩提寺が遠方にあったり、宗派はわかるが菩提寺とは疎遠であるというときなどは葬儀社に相談をした方がよいでしょう。
葬儀社への依頼
葬儀社への依頼は早い段階ほど経済的です。できれば病院から自宅に帰る搬送の段階で依頼をします。搬送はA社、葬儀はB社とすると、余分なお金を使うことになります。葬儀社の多くは、依頼を受ければ搬送料金無料、という会社が多いからです。
葬儀社に依頼するときにポイントは、
- 対応は丁寧で十分に説明するか
- 葬儀費用の内訳を十分に説明するか
- 遺族の疑問、相談にまじめに答えるか
- 地元の評判はどうか
などです。
臨終を迎えたら(4)死亡の届け出
死亡診断書と死亡届
死亡診断書と死亡届は、葬儀を行う上でもっとも大切な書類となります。死亡した人が出たときには、市区町村の役所・役場に「死亡届」を、死亡の日から7日以内に提出することが法律で定められています。通常A3判のこの用紙は、左半分が死亡届となっており、右半分が死亡診断書となっていて、医師から1通発行されます。
死亡診断書(死体検案書)は病院の担当医師などが記入することになっており、死亡年月や死因が記入されます。
医師からこの書類を受け取ったら、必ず、故人の姓名、生年月日などに誤りがないか確認をします。医師の印が押されているかどうかも確認します。
役所への届け出
死亡診断書は遺族が記入します。住所欄には世帯主の氏名、本籍欄には戸籍の筆頭者の氏名を記入します。
届出人には同居の親族、同居していない親族、同居者、もしくはその他の家主や地主、管理人などがなります。
死亡届の提出先は、どこの市区町村でも構いません。届け出た役所から本籍地の役所に連絡されます。役所では死亡届を24時間受け付けています。都市部などでは葬儀社が代行することが多くなっています。
火葬許可証と埋葬許可証
役所に、死亡届と共に「死体火葬許可証申請書」(火葬場所の記入欄がある)を提出すると、「火葬許可証」が交付されます。火葬許可証は火葬の際に火葬場に渡します。
火葬場は「火葬許可証」に日時などを記入して返却します。これが「埋葬許可証」となって、墓地に埋葬するときの必要書類になります。
海外で死亡したら
国内の遠隔地や海外で死亡したときは、現地で火葬し遺骨を持ち帰るか、遺体を搬送するかを決めます。手続きその他が煩雑ですから、関係機関、大使館、葬儀社などとの連携が欠かせません。
臨終を迎えたら(3)死亡を連絡する
いよいよ臨終を迎えたときには、危篤を知らせていなかった親類や、勤務先、学校などに死亡の連絡をします。
それ以外の人への連絡は、通夜・葬儀の日程が決まってからの方が間違いありません。また、勤務先や取引先、学校関係、町内会への連絡時に「皆様によろしくお伝えください」と、最初に伝えた人に他の人への連絡を任せてしまえば、連絡が効率的にできます。
菩提寺には僧侶に連絡を入れ、都合を聞いて葬儀日程を決める上での参考にします。
死亡通知状を出すときは、文例を参考にしてください。
湯灌・遺体の処理・死化粧
医師等によって死亡が確認されたら、湯灌を行います。これは遺体を清潔に保つために行われるものです。ガーゼか脱脂綿にアルコールをしみこませ、拭き清めます。その後、遺体の処置を行います。耳・鼻・口・肛門などに脱脂綿を詰め、体内からの流出物を止めます。また目と口を閉じてあげます。
死化粧として、髪を整え生前の髪型のようにそろえてあげます。男性はヒゲはきれいに剃り、女性には薄化粧を施します。遺体の処置が終わったら、故人が好んでいた衣服などに着替えさせます。着物は左前にします。
遺体の処置は、病院なら医師や看護師、自宅なら葬儀業者がしてくれます。礼儀として近親者が手伝い場合もあります。
遺体の搬送
遺体の搬送は多くの場合、葬儀社の手配によって行われます。葬儀を依頼する業者が決まっていればそこに頼み、決まっていなければ病院と提携している業者に運んでもらいます。その際は、遺体の搬送だけの依頼か棺に遺体を納棺した状態での搬送かによって、料金が大きく変わりますので、あらかじめ概算を聞いておきましょう。
遺体が納棺されない状態で帰宅するときには、自宅にふとんを敷き、遺体がすぐに安置できるよう準備する必要があります。
納棺までを病院で済ませ、霊柩車で運ぶケースもあります。
臨終を迎えたら(2)死亡のときに
病院での逝去
最近では死亡者の7割が病院で亡くなっています(厚生労働省人口動態統計)。「ご臨終です」「○時○分、死亡を確認しました」という、医師の宣告によって人の死が確認されます。宣告の後、死後の処理が施されます。遺体はこの後、病院の霊安室、病室などに移され、帰宅を待ちます。
臨終に立ち会った家族は、この時間に臨終の連絡をとります。連絡を受けた自宅では、故人を安置する部屋を決め、清掃した上で故人の帰宅を待ちます。
末期の水が病院で行えないときには、自宅に帰ってから行います。
自宅での逝去
自宅での逝去に関しては、主治医(かかりつけの病院の医師)に連絡をとり、その指示に従います。主治医から死亡診断書が発行されれば、親族への連絡など、葬儀に向けての準備にとりかかります。
医師の診察を受けていなかったり、原因不明の急死などのとき、あるいは亡くなった状態で故人を発見した場合などは、ただちに110番に通報し、警察官の到着を待ちます。
この際、遺体は移動をさせず、亡くなった状態のままにしておかなくてはなりません。
24時間以内に医師の診察を受けていない場合にも、警察に通報します。
その他の逝去
次の場合には、監察医による検死が必要になります。
- 24時間以内に医師の診察を受けていないとき(主治医がいない場合)
- 原因不明の急死のとき
- 死亡した状態で発見されたとき
- 事故、災害のとき
- 主治医が死因を特定できないとき
1から4の場合には、警察に110番通報します。5のときには、主治医の判断と指示に従います。東京都では以上のときには、110番通報を受けた都立監察医務院が検死を行い、死亡原因の特定に務めます。
臨終を迎えたら(1)臨終の際の大切な心得
危篤を知らせる
危篤とは、病状などが悪化し、生命が危険な状態に陥ることをいいます。そのときから葬儀の準備が始められる、ともいえます。
「あと1日か、2日ではないでしょうか」
などと医師から病人の危篤状態を告げられたら、手分けして、速やかに各関係者に連絡をとります。
危篤連絡の順番は
危篤連絡の順番は家族や近親者を最優先とし、次に病人が会いたがっている人、病人に会わせたい人に連絡をとります。
連絡をする範囲や順番については、事前に決めておいた方が、いざというときに慌てずに対処できます。危篤の連絡は、深夜や早朝であっても電話で連絡をとります。
その際、危篤者の氏名、危篤者のいる場所とその電話番号(正確な病院名、病室)、来てほしい時間を相手側に伝えなくてはなりません。
危篤連絡の言葉
挨拶や病状などの細かな説明は省いても構いません。用件だけを的確に伝えることが大切です。
「夜分遅い時間に申し訳ございません。私は○○の長女で××と申します。実は父の○○(氏名)が危篤となりました。○○駅近くの××病院の○○号室に入院中ですが、一目会っていただけないかと思い、お電話を入れさせていただきました」
伝言になる場合などは、病院名等復唱をお願いするとよいでしょう。ただし伝えたい相手が高齢者であったり、病気療養中のときは、そのご家族の判断に任せましょう。
末期の水
臨終にあたっては、末期(まつご)の水(死に水)をとる習わしがあります。故人への最期の手向けであり、お別れの葬式ともいえます。
清潔な茶碗などにお水を入れたものを用意し、そこへお箸などの先に脱脂綿を巻きつけた先端を浸し、病人の唇を軽く湿らす程度に触れさせます。
臨終に立ち会った人全員が行いますが、順番は配偶者など血縁の深い順番に手向けます。他の人は自分の順番がくるまで静かに待ちます。現在では、末期の水は故人が帰宅後に行われることもあります。